Twitterでは確実に書ききれないのでもうブログの記事にします。推し語り後半ほっぽっててすみません。
スラムダンク、やっと全巻通しで読み終わりました。山王工業戦を1、2巻を読んでから入ったのですがもうその時の気持ちは「大好きなアイドルグループの引退公演会場の最寄駅に着き、何度も聴いた公演セットリストをもう一度最初から聴いている」ような感じです。人気絶頂のアイドルグループ「湘北高校」の引退公演…(物語の終わりとしても、描かれなかった敗退の事もひっくるめての比喩です)
私自身は実はスラムダンクの結末自体はもう知っていて、飛び飛びながらも桜木が背中を怪我してバスケットから離れる事、山王工業に勝つ事、「俺は今なんだよ‼︎」、流川のドライブを止めてしまう桜木、桜木と流川のハイタッチ、そして何よりも大きな「3回戦でぼろ負けしてしまう」という様々な名シーンの知識はありました。ただその過程や順序を知らなかったのでこうして5冊一気に通して読む事で、今までの知識のさらに上をいく情報が一気に頭の中に入ってきて、学校や部活のみんな、当たってきた相手のような「湘北を知っている人たち」でありながら山王や愛和、観客達のように「湘北を知らない人たち」の二つの立場からこの平成2年度高校総体男子バスケットボールAトーナメント第二回戦を見て、桜木がバスケットを始める前から、そして「バスケット選手」になり、そして一度終わりを迎えるところまでを見て、知って自分の中に視覚情報やその時感じた感情は「一人の人間」を見た時のそれです。これを書いている今でもめちゃくちゃ顔が熱いし読み始めてから1時間と少ししか経っていません。
途中、何度も本を閉じて部屋の中を歩き回ったり1冊読み終わる毎に帯を外して本棚にしまうという事をしても、ずっと観客や軍団、晴子さんに彩子さんの視線を通して見てきた彼らの事が焼き付いてて、すぐに次を手に取っていました。そうして迎えた20巻。もう山王には勝ったという事前知識があったとしても、永遠を信じないけれど明日は信じる人のように「お願いだから追いついて、そして点を守って」と祈り、そして18巻冒頭の「こんな風に 誰かに期待されるのは 初めてだったから…」というモノローグを見て苦しくなり、その後審判席に登っての専制や山王の反応、そしてゴリの回想で「桜木花道という一人の人間が肯定される」という事をこの試合に関わった人たち皆、そしてそれを神の視点から読む読者までもが経験できるというのはすごい事だと思うし「祝福」のような何かに思えました。
そしてそこからの「俺は今なんだよ‼︎」は重かった。スラムダンクというどう編集しても20冊超になる作品の中で主人公としてフォーカスされてきた桜木の負った怪我は私の中ではあまりにも意外で「え、そんな事で?」と思うものでした。海南戦でも机に突っ込んでいたのに、何で、と気分が冷え込んでいく内にどんどん具合が悪くなり、最終的にはリハビリに通うほどになるという結末とその途上で放たれた「俺は今なんだよ‼︎」というのは本当に読んでいて辛かったです。20点離された時よりも辛かった。具体的に言うと桜木自身が自分の怪我の状態と今この時を天秤に掛けて「この後バスケットができなくなっても、でも今だけは」という決断を下したのが本当に辛かった。初期の方で「ああ見えてあいつ繊細なんだよ」と言われていてそれをここで持ってくるのか、と感心すると同時にまだ高校1年生、それもなって4ヶ月ばかりの15歳の男の子にその後の人生が掛かるような決断を数分で下せというのはとても残酷で、そしてその「運命」に導かれた男の子が彼含め11人いる空間は画面構成抜きにしてこの集英社漫画単行本フォーマット以上の、それこそ本当に今1990年8月のインターハイ会場の観客席にいるような感情のどよめき、手に握る汗の感覚でした。
また絶対的な王者として登場した山王工業の選手たちも良かったです。一見感情移入が難しそうな彼らも、やはり同い年の高校生で残酷な運命に導かれ集まってきた5人でした。特に好きなのは沢北父ですね。選手ではないんですが、彼もまた自分と同じ物を好きになり自分以上の可能性を持った息子の事を愛しているし、それ故に彼の躓きを「自分のせいかもしれない」と思い監督に頭を下げてアメリカ行きを経験させるという。この漫画では得てして大人(特に親)が描かれないんですがだからこそ光った面もありますね。後河田弟の事を皆「デカいだけで何もできない」という風に思っていなくてそれも良かったです。勿論キャプテンの弟だから、というのもあるかもしれませんが宮益のようにユニフォームを取れるという事はそれなりの信頼と実績があるわけで、そこに自信を加えて盤石なものにしようという監督の采配が良かった。お兄ちゃんも理不尽に怒らないしね。
また海南メンバーや回想で挟まれる仙道、冬の選抜に向け練習を重ねる翔陽も良かった。私は宮益のオタクなので海南が出てくると重箱の隅を突き舐めるように宮益を探してしまうんですがちゃんといて良かったです。試合にも出してもらえてるといいなというか武里で試合に出ていたような描写があるので余裕がある時は多分出していますね。桜木程効かなくても宮益みたいな選手が得意ではないチーム・選手はいると思うので…。
後ギャグ的に扱われがちですが魚住の桂剥き、あれも目頭が熱くなりました。読んでいて思ったのですがやはり前半終了少し前からゴリは「湘北のバスケをする」という事よりも河田兄の事ばかりを意識していて視野が狭くなっているように思いました。もうそのせいで何もかも踏んだり蹴ったりな所に魚住の登場ですよ。しかも板前ルックで刃物と大根持ち込んでいる。これだけでも読んでいる側からするとゴリはかなり救われたと思いますね。馬鹿やっているメンバーを叱ったり呆れたりするのが平素の彼じゃないですか。来るだけで異常な状態から平素に戻せるって中々無いですよ。しかもそのあとのアドバイスで完全にゴリを河田の呪縛から解き放った。彼は偉大だ……。
前述したように私はこの湘北対山王を「大好きなアイドルの引退コンサート」と例えたのですが、これはリアルタイムで読んでいなかったからこそ出たのでは?と自分で思います。なぜかと言うと私がスラムダンクを知った時、連載はすでに最終回を迎えていました。そしてスラムダンクを読み始めた時も最後の展開まで知っていて、いわば「終わりを見据えた」状態だったのです。ほら、アイドルも大体引退コンサートが最終活動で、その後年度や時期の境目を期日に引退するじゃないですか。それなんですよね。勿論スラムダンクは引退なんて無くて永遠にスポーツ漫画の金字塔として、また色々な人たちの心の中にその人なりの形で残っていくので厳密には違ってしまうのですが…。そしてこれは完全にこじ付けだし知っている人にしか通じないんですが光GENJIと重なる部分があって私は光GENJIが好きなので余計に引退コンサートという例えが出るまでが早かった部分はあります。残る側と出ていく側、そして絶頂の中煌いている人たちという点でつい。
まだ書きたい事はたくさんありますが、うまく言語化できないのでまた期日ツイッターなどで都度書くと思います。
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